★「多摩てばこネット」さんにて、2002年8月に掲載して頂いた記事です。★
多摩地区のいろいろな作家さんを取材紹介するページ。
サイトリニューアルにてリンク切れの為、ご了承を得てこちらに新規掲載です。

当時、初めての取材をキンチョーして受けましたが、
とても良い文章を書いて頂いて感激した思い出の記事です。
今読み返すと訂正したい部分も若干ありますが、原文のままで〜。


多摩クリエーター 2002,8,
「布にワクワクを描く」   東大和市「染めもの 中野」中野スズミさん

友禅染めは絵画のような絵模様が生命。
キャンバスでなく絹地に絵を描く。描く人によって画風は違ってきますから、友禅の柄はとても多彩です。
中野さんの作品は、その中でも他にはないオリジナリティ溢れるものです。華やか、鮮やか、というイメージが強い友禅ですが、中野さんの出す色は温かみのある優しい淡い色。そして描き出す図柄は柔らかで綺麗な曲線が印象的。優しい色と柔らかい線で染め上げられた作品は、見るだけで季節や温もりも感じられる。そんな不思議な「中野オリジナル友禅」です。



中野スズミさんは東大和市在住の手描き友禅の染色作家。ふくさ、スカーフ、半衿などの小物や、額絵、帯などを手がけています。友禅染めは元禄の頃から伝わる日本の伝統的な染織工芸で、華麗な絵模様と糊を置いて防染する技法が特徴。明治期から型紙を用いる型友禅で量産されるようになりましたが、もともとは全て手描きで行われていました。
手描き友禅の工程は「あいばな」という蒸すと消える染料で下絵を描くところから、糸目引き(防染糊で下絵をなぞる)、地入れ(糊を定着させるための作業)、色挿し、地染めなど、蒸して色を止めて洗って乾かすまで約十工程があり、時間のかかる作業です。
一つ一つの工程に熟した技が必要なため、ふつうは何人もの職人が分業して一つの作品を作り上げますが、中野さんは全てをひとりで完成させます。

美術大学で彫刻を学んだ後、染色工房で修業。そこで全行程を学ぶことができたのが「ラッキーだった」と笑う中野さん。工房を辞めて個人で染色を始めてから7年、創意工夫も加わり今はほとんどオリジナルの染め方になりました。
時には「辻が花」模様も染めます。「辻が花」は桃山時代に興隆したものの、その技法の難しさのため江戸時代初期に姿を消し「まぼろし」と言われているものです。中野さんはその文様を友禅の技法で染めています。ふつうの友禅にはない墨ぼかしや墨描きの作業が加わるため、より時間と手間がかかりますが、「わび・さび」を美しく見せる辻が花の世界に中野さんのセンスが加わり、新しさと時代を共に感じられる不思議な美しさが楽しめます。



中野作品の絵柄のモチーフは椿や桜、さらまめ、ちどり、魚、古代中国の麒麟と様々。やかんやバスなど友禅の柄らしからぬものも。古典的なデザインを基本にしながら、面白いと思ったものは何でも絵柄にしてみる。やかんも魚も中野さんの手を通すと友禅の絵柄としてしっくり布地になじんでしまうから不思議です。「常にユーモアを忘れないように、ということは心掛けています」という中野さん。魚たちはなんとなく人間のように表情があり、そらまめや花の形にも思わず微笑んでしまいそうな〈味〉があります。

絵柄の線として残るのは、糊で防染した糸目の線です。下絵と糸目で引く線は微妙に違い、線の太さを考えて糊を絞り出すのは簡単そうに見えて素人には出来ない技。それでも中野さんは「下絵より糸目を引いた線の方が上手くいく」といいます。精神を集中して思い切って引く。緊迫感とのびのびした感じが、線を生かします。

 

淡くて優しい色遣いも中野友禅の特徴です。「色を作るのは楽しいけれど難しい。蒸して洗って乾かした後、綺麗な色が出ていたときが一番嬉しい」。配色も最初から決めている訳ではなく、色をさしながら決めていきます。「最後までどう仕上がるか予想がつかない」−−そう言って笑う中野さんは本当にワクワクと楽しそうです。
作家の柔らかい雰囲気とさりげない優しさ、そしてピリッと効いたユーモア・・・それらが渾然とまじりあって、微妙な友禅の色あいになるのかもしれません。



技を見る!(あちこち加筆しました)

まず生地と下絵を用意し、
あいばなで下絵を生地に写す。

糸目糊を引く。
(自然乾燥)

糸目地入れをして糊を定着させる。
(大豆をすったものをベースにした液を引き、すぐにあぶって乾かす)

柄の中に色を挿していく。
(染料を調合して何度も試してからね)

挿し終わったらカラ蒸しをする。
(次の伏せ糊に色を取られないよう、挿し色の色を止める)

伏せ糊をする。
(色の入った柄の部分を糊伏せして覆ってしまう。自然乾燥)

染め地入れをする。
(糊を定着させるのと同時に染めムラをなくすため。自然乾燥)

いよいよ地染め
(何度も色を調整して一気に地色を引いていく。
これで全体に色が入った。自然乾燥)

蒸し
(乾いた生地を新聞紙で巻いて必要な時間蒸し、完全に色を止める)

水元
(糊や不純物を洗い流す)

乾かして、アイロンをかけ、仕上げ・仕立て作業へ。



大まかな説明なので、
細かい事を言えばもっともっと作業はあります。
あれしたりこれしたり、だからオモシロイのです〜。